1990年代に開催された国際会議での重要な争点、すなわち、環境、人権、リプロダクティブ・ヘルス・ライツ、HIV/AIDS、開発と貧困、ジェンダーなどは、いずれも地球規模での健康問題と深く関連していた。多くの国際会議やサミットで提唱された開発目標を統合し、一つの共通の枠組みとしてまとめたものがミレニアム開発目標である。2008年7月、日本政府はG8サミットの主催国として、「人間の安全保障」の視点から一人ひとりの健康に着目するとともに、感染症対策と母子保健サービスを包括し、個人や地域社会の能力強化を目ざした保健システム強化という基本政策を打ち出した。
多くの途上国において、第二次世界大戦後の短期間に急激な健康水準の改善を成し遂げた日本に対する期待は大きい。文化、宗教、経済状況、交通手段、教育レベルなど、途上国の保健医療を取り巻く環境は日本とは大きく異なる。しかし、母子健康手帳のように日本の先輩たちの工夫や努力は、途上国の保健医療関係者にとって大きなヒントとなるに違いない。