医療経済研究
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研究資料
配合剤の日米市場におけるR&Dと普及に関する研究
加藤 晃
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ジャーナル オープンアクセス

2011 年 22 巻 2 号 p. 179-195

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抄録

研究開発型製薬企業の新薬研究開発の生産性は、巨額の研究開発費投資にも関わらず、1990年代半ばの黄金期を境に低下してきている。ブロックバスターが特許切れを迎え、ジェネリック薬品にシェアを奪われる「2010年問題」は、焦眉の経営課題となっている。そこで、持てる知的財産を有効活用して商品ライフサイクルを延ばすライフサイクルマネジメント(LCM)が注目を集めている。LCMには、新剤型、効能追加、新配合剤などいくつかの手法があるが、本稿では「新配合剤」を研究対象とする。米国市場においては、配合剤はジェネリック製薬企業から大手製薬企業まで広く開発が行われている。一方、日本市場では、2005年まで厳しい規制があり、規制緩和後に開発に着手した製品の承認が2009年から出始めた段階にある。
日本においては、新配合剤は知的財産権の延命策と捉えられがちであるが、米国市場では商品ライフサイクルの成熟期のみならず、成長期における早期の売り上げ拡大を目的とした商品開発も多く行われている。本稿では米国市場(where)における配合剤の承認件数を新規物質と比較して、上位社とそれ以外(who)に分け、過去40年間の件数の変遷を調べた。その結果、上位社の急伸による戦略の変化が確認された。また、日米比較が可能な2000年から2009年の10年間について、単剤の承認から新配合剤の承認までの期間を調べることによって、商品ライフサイクルのどの時点(when)で開発を行っているかを確認した。更に、薬効の種類(what)を比較することによって普及度合いを検証した。その上で、配合剤の普及については日米でどのように異なるのか(how)、何故そうなのか(why)の考察を行った。
LCMとしての配合剤は、知的財産権を活用することによって顧客に価値を提供する手法であり、製薬企業にとっては少ない研究開発費(コスト)と低い事業リスクでキャッシュフローを維持できる代替戦略と位置付けられる。

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© 2011 本論文著者

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