医療経済研究
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営利法人の病院経営のパフォーマンスに関する一考察
―米国の先行研究のサーベイを中心に―
遠藤 久夫
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1996 年 3 巻 p. 57-73

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抄録

規制緩和の一環として営利法人による病院経営の問題が議論されているが、本稿では営利病院参入に関して次のような議論を展開している。1)民間非営利組織に関する海外の先行研究から、非営利組織は営利組織と比較して、①不完全情報下での取引効率を向上させる反面、②組織運営上の非効率(X非効率)が発生する可能性があることを指摘した。2)アメリカにおける営利病院と非営利病院のパフォーマンスを分析した1980年代前半の先行研究をサーベイすることにより、①営利病院のコスト効率が優れているという明白な事実は確認されない、②営利病院はマーケティング戦略に優れる、③営利病院と非営利病院の医療の質に差があるという事実は確認されない、④営利病院の方が支払能力の不足した患者に対するスキミングが見られる、という営利病院の特徴を示した。3)わが国における営利法人による病院経営を考える際、①営利病院参入による医療セクターの効率改善のプロセスを明確にする必要、②医療へのアクセス、非営利病院との不公正競争、医療の継続性などの視点から吟昧する必要があることを指摘した。

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