2020 年 31 巻 2 号 p. 77-101
本稿では、2012年度に実施された一般名処方の推進を含むジェネリック医薬品に対するインセンティブ政策に着目し、政策の経済効果を明らかにすることを目的にする。分析を通じて、次の3点が明らかとなった。(1)本政策を通じて、ジェネリック医薬品の販売量は降圧剤市場で7.7%程度押し上げられ、特に病院、診療所でのジェネリック医薬品の利用が拡大された。(2)都道府県別に分析したところ、ジェネリック医薬品の利用のみならず、政策の効果についても地域差が存在した。政策の効果と過去のジェネリック医薬品の利用状況は正の相関関係にあり、2012年度以前からジェネリック医薬品を積極的に利用していた地域ほど、政策の効果が大きい傾向にあることが確認された。(3)先発医薬品からジェネリック医薬品への切り替え時における患者属性の違いを考慮に入れて2012年度に行われた政策の財政効果を試算したところ、降圧剤市場全体に費やされる薬剤費の1%強(年間120億円程度)が抑制されたことが明らかとなった。この結果は、患者属性の異質性を考慮しない場合よりも3割以上高い抑制額であり、患者属性の違いを考慮しない従来の方法に基づく数値は過小となっている可能性が指摘された。さらに、インセンティブ政策への政府の追加支出額は30.4億円と試算され、実質的な薬剤費抑制効果は87.6億円となった。