抄録
本稿では、2024 年12 月に提示された高額療養費制度の自己負担限度額の引き上げ案が、患者団体の反対運動や
野党からの批判を経て2025 年3 月に見送りとなった過程を分析する。具体的には、高額療養費の創設から2024 年
の引き上げ案の決定までの歴史的な経緯を整理した上で、2024 年末から2025 年3 月にかけての引き上げ案の政策
修正過程を検討する。とくに、患者団体が要望書・アンケート・署名活動・ロビー活動・専門家との連携などを通じ
て引き上げ案の政策論点化と世論形成に成功し、最終的に見送りが実現した経緯を検証する。また、この引き上げ案
の見送りが、2000 年代以降の障害福祉や難病対策の自己負担増の政策修正過程と共通点があることを指摘する。