2025 年 72 巻 2 号 p. 2_19-2_26
新潟県には木綿を材料に作られた片貝木綿と呼称される伝統的染織品が存在する。この片貝木綿の誕生には、1920年代に柳宗悦らが提唱した「民藝」との関わりが少なからず存在していることがわかった。本稿では、新潟県小千谷地域片貝木綿の成立と発展を中心に、民藝運動の指導的役割を担った柳宗悦の甥である柳悦孝と生産者たちとの交流について詳細に論じ、柳悦孝を通じた民藝の考え方が、新潟の染織品にどのような影響を与えたのかについて考察していく。その結果、柳は従来の手織のみの手法だけでなく、機械の新しい活用法を駆使して良質な製品を生み出す試みを模索し、新潟の織物問屋であった西脇新次郎、および同地で紺屋を営んでいた松井喜平太との協働により片貝木綿が誕生した。このような経緯を鑑みると、民藝の思想を根底に持っていた柳悦孝が目指した新しい取り組みが、新潟の染織品においても展開し、発展を遂げることになったと指摘することができた。