人文地理
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論説
香港におけるホームレス問題に関する施策の再編と非政府系組織の社会福祉的対応
コルナトウスキ ヒェラルド
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2008 年 60 巻 6 号 p. 533-556

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抄録

1990年代後半の香港におけるホームレス者の急増は,アジアの財政危機の経済不況や,新自由主義的再編によって引き起こされたが,既存のホームレス施策の再概念化と,ホームレス施策再編を,政府に強く突きつけることにもなった。政府は2001年にホームレス施策に対する3年行動計画を実施することになったが,それ以前より非政府系組織は社会福祉的な対応を手がけはじめ,今日の中間施設体系を生み出していた。とはいえ,施策に対する倫理観や関係性の違いにより,非政府系組織の性格はばらばらで相互の連関も弱かったといえる。しかし政府側も徐々にこうした組織に社会福祉業務を委託し,介入可能な程度に応じてモニタリング機能を発揮し始め,目に見えるホームレスを立ち退かせ収容する中間施設を利用することになった。加えて補助金や施設サービスを投下供給することによって,中間施設やホームレスへの社会福祉サービスの地理的配置にも影響を与えることにもなった。

本論文では,香港のホームレス者への社会福祉的な対応から生まれた中間施設のシステムの確立,その運営の専門職能化や実施される施策との関係性,こうしたサービス内容に関する内部的な動態,そして香港の都市的コンテクストに対する地理的な分布の意味について考察することを目的にしている。

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© 2008 人文地理学会
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