2013 年 65 巻 3 号 p. 199-214
日本の地理学者によるアジア研究,とりわけ東アジアと東南アジアにおける1980年代以降の研究をある程度網羅的に紹介・展望する。とりわけ,グローバル化によって,人もモノもアジア各地を流動した時代である。研究者が直接現地にいき,その国の研究者との共同研究がさかん行われた30年であった。とりわけ中国やベトナムに関しては,大きく研究環境がかわり,総合的な学際的学術調査(科学研究費等による国際共同研究など)や個人などの調査も一定の手続きをふめば可能になった意義は大きい。それまでの文献を中心とした研究から,発展する中国の現状を都市・農村で把握しようとする研究が増えた。台頭する地域研究と人文地理学がどう対峙し,研究を進めてきたかの回顧と展望を試みる。国としてもアジア諸国の研究重視の流れがあり,それをうけて人文地理学会でもアジア地域研究部会が設立され,さまざまな活動を行ってきた。この流れを紹介しながら,新しい人文地理学のアジア研究の動向を環境・資源利用,ツーリズム,ポストコロニアリズム,地域間交流研究)などと,調査・分析手法の進化(GIS,GPS)を見通しながらレビューする。