人文地理
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論説
伝統作物の全国ブランド化―兵庫県篠山市における丹波黒を事例に―
小林 基
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2016 年 68 巻 4 号 p. 397-419

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抄録

1970年代に,研究者らによって保全の必要性が主張され注目された「伝統作物」は,国内各地で農産物ブランドの形成を通じた農業振興に活用されうるものとしてあらためて注目を集め,研究が進んでいる。本稿は,兵庫県篠山市の丹波黒のブランド化を題材とし,伝統作物のブランド化過程を解明する。1970年代末以降,丹波黒は転作作物として生産が拡大され,全国的・周年的な需要が掘り起こされていった。1990年代になると西日本を中心に各地で新興産地が生じ,篠山では利益保護のためのブランド認証が必要となった。さらに,生産者と流通業者の関係をみると,他産地に先駆けて商品を出荷したい流通業者と収穫に時間と手間をかけざるをえない農家との間に葛藤が生じ,その調整がなされていた。このように,生産・供給システムの広域化による需要獲得と利益保護の両立,高品質性と早出しの両立といった諸方策により,丹波黒の全国ブランド化が展開したことが分かった。

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© 2016 一般社団法人 人文地理学会
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