人文地理
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特集 サハラ以南アフリカの経済格差における食料と土地
特集 サハラ以南アフリカの経済格差における食料と土地
大山 修一
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2017 年 69 巻 1 号 p. 1-8

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抄録

2000年から2008年にかけて鉱物資源や農産品の国際価格が高騰し,サハラ以南アフリカでは中国をはじめとする非西洋諸国からの外国投資が急増し,高い経済成長を達成した結果,多くの中所得者層の消費者が出現した。このような状況は,アフリカ・ライジングとして「明日の成長市場」と呼ばれた。しかし,資源価格の下落とともに経済成長は鈍化し,国や地域,個人によって不平等が拡大しており,ディバージング・アフリカ,「分岐するアフリカ」と呼ばれるようになっている。本特集では,経済格差が拡大するアフリカにおける食料と土地に着目し,(1)自給指向性の強い農村社会が市場指向性を強めることによって生活の変化が激しくなるなかで,農村内において食料不足や飢餓を回避する仕組みや異なる民族間の相互扶助が機能していることを明らかにするとともに,(2)多くのアフリカ諸国で1980年代後半から1990年代にかけて土地法が改正され,土地取得に対する市場メカニズムの導入により,農村部の土地が生計手段としてだけでなく,財産として扱われるようになった結果,土地権利に生じている変化と社会の混乱について議論した。地理学は本来的には空間の広がりにおける差異を分析し,その現象の原因と結果を取り扱う学問である。本特集により現代世界の不平等を多角的に検討する重要性を提示した。

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© 2017 一般社団法人 人文地理学会
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