2017 年 69 巻 1 号 p. 87-99
本稿では,ウガンダの高収入世帯において,土地や財産の所有について女性が副次的な位置づけで,女性による土地や財産の管理がいかにはばまれてきたのかについて分析する。女性の財産所有に対する権利は弱く,「貧困の女性化」といわれるように女性は貧困状態におちいっている。女性は結婚後に家計にとって副次的な役割しか担うことができず,離婚や別居することになると,自分自身で生きていかなければならなくなる。土地や財産所有権に関するジェンダー間の不平等は,家父長制を重んじる文化や社会の価値観だけでなく,女性のエンパワーメントの障害をつくりだす法制度によっても生み出されてきた。本稿では,高学歴の女性が,土地購入や家屋の建築に際して経済的な貢献をしたにもかかわらず,所有権を取得できない事例を示している。また,別の事例では,女性がみずからの名前を土地所有証明書に入れることができず,女性は土地の所有権を保有できず,土地の使用権のみを保有するにすぎなくなっている。これらの事例では,夫が財産をみずから単独の所有物として登録している。本稿は,ウガンダにおける世帯の所有する土地や財産の権利の複雑な動態を理解する一助となり,サハラ以南アフリカだけでなく,発展途上国において女性がもつ土地・財産に対する権利の現状に関する知見を提供するものである。