人文地理
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論説
海岸林における保全活動と土地所有形態―福岡県福津市を例に―
近藤 祐磨
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2017 年 69 巻 3 号 p. 279-302

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抄録

本稿は,福岡県福津市の海岸林を事例に,土地所有形態が保全活動や関連する公的管理をどう規定しているかを検証した。その結果,国有林は,国の管理方針と異なる植生を望む住民が活動する際にその障壁が高く,国の管理方針の制約を強く受けていた。加えて,国有林では地方自治体が独自の公的管理を行うことを消極的にさせていた。一方,公有林では,住民の意思に基づく保全活動が円滑に進行していた。さらに,所在不明の不在地主が所有する私有林では,公益を理由とした専権的な公的管理や保全活動がみられた。これらの所有形態の違いが,海岸林の景観のミクロな差異を作り出している。しかし,所有形態による影響の程度は,海岸林における保全活動の主体間関係のあり方によっても異なっていることから,所有形態は,主体間関係と連動しながら保全活動のあり方を規定する大きな条件になっている。近年の日本では,森林の管理不全が深刻化し,所有者以外の住民による保全活動が増えてきた。そのため,保全活動の分析視角として,従来指摘されてきた主体間関係に加えて,土地所有形態に着目することが重要である。これによって,①保全活動のメカニズムや実態をより詳細に解明すること,②地理学などにおける林野を対象にした研究や,政治生態学的なアプローチの研究を,現代的な文脈で再評価することが可能になる。

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© 2017 一般社団法人 人文地理学会
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