人文地理
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研究ノート
愛知県西尾市一色町における養鰻生産者の関係性とその変化
前田 竜孝
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2018 年 70 巻 1 号 p. 73-92

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抄録

本研究は,養鰻業における経済的な変化を,産地における制度的・技術的な変化と,それらに応じた生産者間の関係性の変化に注目しながら考察した。事例地域として,日本有数の生産量を誇る愛知県西尾市一色町を設定した。一色町の養鰻業では,第二次世界大戦後の高度経済成長期に行政が中心となって生産基盤が整備された。各経営体も,この時期に生産力の強化を目的として,加温式ハウスに代表される様々な生産技術を導入した。一方で,各経営体の経営主間の関係性はこの期間に変化した。特に,集出荷作業における手伝い関係は,加温式ハウスの導入による作業の省力化によって解消された。このように,養鰻産地を取り巻く経済状況と個別経営体の経営状況,生産者間の関係性は相互に作用している。ただし,関係性の変化は経営主の経験によってそれぞれ異なるため,これらの相互作用を明らかにするためには,各経営体の個別具体的な状況を考察することが重要となる。

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© 2018 一般社団法人 人文地理学会
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