人文地理
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論説
大阪大都市圏郊外外圏における新設住宅の立地からみた都市構造の変化―奈良県桜井市を事例に―
熊野 貴文
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2018 年 70 巻 2 号 p. 193-214

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抄録

本稿では,大阪大都市圏の郊外外圏に位置する奈良県桜井市を対象に,1980年代後半以降の新設住宅の立地と土地利用変化を分析し,その要因について考察した。桜井市では,人口増加と地価高水準の局面にあった1980年代後半~1990年代前半に比べて,人口減少と地価下落の局面にある1990年代後半以降の時期の方が,新設住宅の離心化と中心市街地での低・未利用地化が進行し,都市構造は低密度化している。その要因として,以下の点を指摘することができる。大都市圏の地価動向を反映して郊外外圏の住宅供給の構成が戸建住宅中心に変化したこと,郊外間通勤の増加と関連して鉄道などの公共交通機関よりも自家用車を前提とした生活行動が成立していること,土地需給の空間的ミスマッチが発生していること,土地所有者の高齢化やバブル経済崩壊を背景に周辺部で土地の売却や賃貸アパート建設がみられたこと,そして,中心市街地の土地所有者が投資リスクの低い土地活用として駐車場経営を選択したことである。以上の知見は,郊外外圏の都市構造の変化が,郊外都市内の土地利用条件に加えて,郊外化の終焉や多核化といった大都市圏の構造変化の影響を受けていることを示す。

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© 2018 一般社団法人 人文地理学会
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