人文地理
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研究ノート
調理方式と食育の取り組みからみる小学校給食と地域との関わり
堀川 泉
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2020 年 72 巻 4 号 p. 403-422

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抄録

本稿の目的は,日本全国の公立小学校で実施されている学校給食を取り上げ,地域との関わりについて探ることである。そのために,学校給食の役割の変遷を踏まえた上で,調理方式の採用や,地場産物,郷土料理などを通じた食育の取り組みについて,市町村レベルでの分析を行った。その結果,以下の点が明らかになった。第一に,2008年の学校給食法改正以降,学校給食は地場産物や郷土料理を通して地域文化を学ぶ食育の場として,広く認識されるようになった。第二に,全国の市区町村単位での調理方式採用状況は,単独調理場方式(全体の24.3%),共同調理場方式(57.8%),両方式の併用(18.0%)に大別され,北海道や東北,山陰地方で共同調理場方式が優勢であるが,非大都市圏と大都市圏の対照性は明瞭でない。第三に,近畿,北陸,中国地方圏において,地場産物の使用が確認された市町村は全体の80%を超えるが,地域について学ぶその他の食育の取り組み実施率は20~40%程度にとどまる上に,府県間での違いが大きい。第四に,調理方式や学校規模に応じて,それぞれに適した食育の取り組みがある。第五に,学校給食の調理方式や食育の取り組みには,市町村合併や市区町村の財政力指数,小学校の規模や分散性などが影響しているが,必ずしも決定的な要因ではない。

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© 2020 一般社団法人 人文地理学会
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