人文地理
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研究ノート
神輿渡御祭における担い手の居住地の変遷―京都市西院の春日祭を事例として―
大島 明
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2022 年 74 巻 4 号 p. 389-407

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抄録

現代,氏神の祭りにおいて,その担い手は,必ずしも氏子区域の居住者ではなくなった。その1例として,京都市西院の春日祭における担い手について,その居住地の変遷を明らかにすることが本稿の目的である。資料として,1967年と2016年の『神輿輿丁名簿』を用い,そこに登載された輿丁の居住地を個人レベルで分析した。春日祭では,近代初頭,氏子区域の集落(「旧町」)を東西に2分し,それぞれの神輿は区域内の輿丁で担われていた。京都市との合併前後から進行した都市化にともない,輿丁の減少が始まった。戦後,都市化により流入人口が増加した。しかし,輿丁になる者は少なく,神輿渡御祭の存続が困難になった。そこで,相互協力組織として京都神輿愛好会が設立され,区域外から輿丁が導入された。これにより,神輿渡御祭は存続された。しかし外部からの応援が大多数になると,神輿巡幸の主導権を氏子がいかに維持するかが課題となった。そのため,氏子の組織はその増強を図ったのである。その結果,2016年には氏子の輿丁は増員され,その居住地は「旧町」のみならず氏子区域の全域に拡大した。また,区域外では輿丁の居住地は京都市全域のほか遠隔地の長野県にまで及んだ。

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© 2022 一般社団法人 人文地理学会
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