人文地理
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地域文化の理論化
現代日本社会における文化的転回と近年の文化地理学研究の動向を中心に
福田 珠己
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2005 年 57 巻 6 号 p. 571-584

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抄録

20世紀後半以降, とりわけ日本社会において, 地域文化はさまざま形で顕在化している。危機に瀕した保護すべき対象としてではなく, 国・地方の政策の表舞台に現れ出た地域文化は, 農業政策, 観光など経済的側面, あるいは, イデオロギー形成にもかかわる広範な領域と密接に結びついて, 活用されてきたのである。さらに, 地域文化の商品化も顕著な現状であり, 経営的側面からの文化のマネージメントに対する関心もますます高まるばかりである。もはや, 現代の社会的状況から離れて, 地域文化を論じることはできないである。一方で, このような流れの中で, アカデミズムではすでに乗り越えつつあるかのようにみえる本質主義的な議論が自然なものとして主張されていることも指摘できる。
本稿では, 第一に, 日本における地域文化をめぐる状況を「文化」に注がれた眼差しという点から明らかする。第二に, そのような状況のもとで行なわれてきた地域文化に関する研究動向をレビューし, 更なる展開の可能性を展望する。その際, 地域文化がどのような視角からアプローチされてきたのか, 文化はどのように位置づけられてきたのか, そして, それら諸研究は現代社会の動向とどのように関わっているのか, という点に焦点を当てて論じて行く。

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