人文地理
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若者問題と都市社会統制
現代日本のローカルなコミュニティ・ポリシングの事例から
杉山 和明
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2005 年 57 巻 6 号 p. 600-614

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抄録

本稿の目的は, 1990年代の若者に関連した社会問題についての筆者による以前の調査と, 最近の新自由主義的な社会統制をめぐる動向から, 現代日本における若者問題と都市社会統制の関連を説明することである。英語圏の批判地理学において盛んになっている, 犯罪と社会統制, 問題視される若者の表象の社会的構築に関する諸研究を参照しながら, 日本の社会的文脈において特定の問題から派生したモラルパニックを議論する。日本で報告されている若年者に関する問題は他にも多くあるが, 本稿ではとりわけ, 1993年から1998年までのあいだ日本の富山県において近隣住民によって新たな「有害」環境としてみなされたテレホンクラブの規制に関する社会問題に焦点を当てる。そうした「有害」環境から青少年を保護し, 青少年にとって健全な教育を施すことが地方政府に求められた。筆者は, 青少年を保護する法令に対する違反者の取り締まりと監視に関わる「道徳の地理」を考察し, このローカルな過程が, リージョナルからナショナル・スケールに至る都市社会統制の最近の動向と密接に関連していることを示す。それは, 近年の保守的な若者政策の前兆であり, 現代日本における地域に根差した社会統制にも引き継がれていると考えられる。

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