抄録
1985年から1999年までに当科で根治治療を行った上歯肉,硬口蓋原発扁平上皮癌51例を対象として原発巣制御の治療成績を検討した。この時期における全体の原発巣制御率は70.6%であったが,治療法別では,手術のみ73.3%,根治照射71.4%,術前照射+手術68%,T分類別ではT1:85.7%,T2:60%,T3:77.8%,T4:80%,術式別では上顎部切69.2%,上顎全摘80%であった。腫瘍の存在部位と原発巣制御の関係をみてみると,口腔前方に腫瘍が存在する場合,制御は良好であったが,後側方や正中に存在する場合で制御が不良であり,再発部位として側頭下窩深部や翼口蓋窩への再発が比較的多く認められた。このような例では救済手術が不可能で,直接的な死因となることが多いため,手術手技上,後方側方への深い浸潤がある例では,できるだけ良好な視野が得られるようなアプローチを充分計画することが大切と思われた。