頭頸部癌
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口腔癌の新しい治療戦略
顎骨延長を用いた下顎骨再建
三次 正春竹信 俊彦
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2006 年 32 巻 4 号 p. 404-409

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抄録

近年の形成再建外科の進歩により,特に下顎骨では骨,筋肉,皮膚を含めた血管柄付き複合組織移植によりかなりの大きな欠損に対してでも再建可能となった。しかし欠損部が大きくなるに従い,donor siteにおける侵襲が大きくなり新たな機能障害を後遺することにもなる。骨延長法は1950年代にロシアの整形外科医G.A. Ilizarovによりその概念が確立された1)。下肢の長管骨に皮質骨骨切りを加え,改良した創外固定器により骨切り部分にゆっくりと牽引力をかけることで,骨片間に新生仮骨が形成され,牽引をやめて固定すると仮骨が骨へと成熟するものである。Ilizarovはまた,外傷や腫瘍切除およびその他の後天的に生じた中間欠損部位を新生骨に置き換える方法を開発した2)。欠損部位に隣接する健常長管骨の断端に骨切りを加え移動骨片を作成し,この骨片を緩徐に移動させもう一方の健常断端に到達させる。移動骨片が通過した部分に新生骨が形成され,中間欠損に骨が再生するものである。この方法を骨トランスポートと呼んでいる。移動骨片を1個作製し全欠損長を移動させるものをbifocal distraction osteogenesis,欠損部を挟む両端に移動骨片を作製して互いに向かいあって移動させるものをtrifocal distraction osteogenesisという3)。われわれは本法と少量の骨移植を併用して下顎区域欠損の再建を行った。治療期間は長いものの,少ない侵襲で機能的にも形態的にも良好な結果が得られ,本法が下顎再建の有効な治療手段と成り得ることが示唆された。

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© 2006 日本頭頸部癌学会
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