喉頭・下咽頭手術における副甲状腺温存術式の成功率を向上させることを目的に,自験例を検討した。対象は原発巣手術と両側頸部郭清術を行い,健側甲状腺・副甲状腺を温存した喉頭および下咽頭扁平上皮癌初回治療例59例とした。副甲状腺機能は術後3ヶ月に評価し,カルシウム補正を全く必要としない症例を成功例とした。
疾患別,原発巣手術術式別の成功率に差異はなかった。T3以下とT4の間,健側頸部転移の有無で成功率に有意差はなかった。術中所見で上甲状腺静脈の温存が不充分と思われた症例では44.4%,温存甲状腺にうっ血を認めた症例では20.0%と成功率が低かった。これらの結果から,温存甲状腺にうっ血を生じない,確実な上甲状腺静脈の温存が副甲状腺機能温存に重要であると考えた。