頭頸部癌
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基礎
WntシグナルによるSnailの活性化を介した癌の浸潤・転移能の獲得
太田 一郎家根 旦有細井 裕司
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2008 年 34 巻 1 号 p. 19-23

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抄録
Zinc-finger型転写因子Snailは,E-カドヘリンなどの細胞間接着分子の発現を抑制することにより,癌細胞が浸潤・転移能を獲得した際に認められる上皮―間葉移行:Epithelial-Mesenchymal Transition(EMT)を誘導することが明らかにされている。また,E-カドヘリンの細胞内結合タンパク質であるβ-カテニンは,細胞外の分泌タンパク質であるWntが細胞に作用するとユビキチン化されず安定化し,核内に移行して転写因子であるTCFを活性化することが知られている。Wntシグナルは癌細胞において活性化されEMTを誘導すると考えられているが,WntシグナルとSnailとの相互作用については明らかにされていない。そこで今回われわれは,癌細胞におけるWntシグナルとSnailとの関連について検討した。その結果,癌細胞においてWntシグナルはSnailを核移行させ活性化し,さらにSnailの活性化を介してEMTを誘導し癌細胞の浸潤を促進させることを明らかにした。Wntシグナルはβ-カテニンおよびSnailの両者を安定・活性化させることでEMTを誘導し,癌の浸潤・転移を促進すると考えられる。
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© 2008 日本頭頸部癌学会
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