抄録
咽喉頭悪性腫瘍に対する喉頭機能温存療法の一つである経口的咽喉頭部分切除術(TOVS)について解説した。本法は拡張型喉頭鏡,硬性内視鏡下で手術操作を行うが,広い操作腔,広い視野の元で一塊切除が可能な術式である。手術の適応は中下咽頭,声門上部の表在癌,T1,T2,一部のT3症例が対象となりうる。また放射線治療後の再発症例に対しても一部応用可能である。頸部リンパ節転移に関しては切除可能病変であれば同日または1~2週間後に頸部郭清術を行うことが可能である。成績に関しては1年以上経過を観察しえた42例におけるKaplan-Meier法による5年粗生存率,疾患特異的生存率,喉頭温存率は74%,85%,89%であった。TOVSにおいては腫瘍の一塊切除標本が得られることも利点であり,腫瘍の深達度を評価することによりN0症例における予防的頸部郭清術の適応を最適化することも可能である。