2014 年 40 巻 1 号 p. 75-80
頭頸部領域に生じた高分化型脂肪肉腫の3例を経験したので報告する。症例1は78歳男性,頸縦隔脂肪肉腫。他院で縦隔病変の開胸切除後に当科紹介となり,頸部病変を全摘した。症例2は41歳男性,中下咽頭脂肪肉腫。経口切除後に再増大したため,頸部外切開により腫瘍を全摘した。永久病理診断にて一部粘液型部分を認めたため,術後照射を行った。症例3は62歳男性,頸縦隔脂肪肉腫。経頸部的に腫瘍を全摘した。
脂肪肉腫は悪性軟部組織腫瘍の中では発生頻度が高いが,頭頸部領域では稀である。一般に悪性軟部組織腫瘍の治療には十分な安全域をつけた広範囲切除術が原則とされるが,脂肪肉腫の中でも良悪性中間腫瘍に位置する高分化型脂肪肉腫においては切除縁に関する統一見解はない。本報告では全例に辺縁切除術を行い,現在まで明らかな再発を認めていない。浸潤傾向のない頭頸部高分化型脂肪肉腫に対しては隣接臓器を温存した辺縁切除術で対応可能と思われた。