2014 年 40 巻 1 号 p. 87-92
2010年に提唱された日本の甲状腺腫瘍診療ガイドラインでは,乳頭癌を低危険度・高危険度とグレーゾーンの3つにリスク分類している。高危険度癌には甲状腺全摘が推奨され,低危険度癌には葉切除が容認されている。一方で,グレーゾーンでは片葉癌の切除範囲が規定されていない。今回,当科での372例のグレーゾーン乳頭癌のうち,355例に対して葉切除を行った。355例中,局所再発や肺転移などへのヨードアイソトープ治療のために全摘を追加した症例が19例存在した。19例中14例は非担癌生存中で,2例のみが肺転移により死亡した。これらの成績からは,グレーゾーンでの片葉の癌の場合には葉切除が容認される。グレーゾーン372例における術後反回神経麻痺はわずか1例のみであった。また,グレーゾーンでの全摘17例での術後副甲状腺機能低下もわずか1例であった。従って,合併症を危惧したために葉切除を行った訳ではないと言える。