抄録
頭頸部領域原発の腺様嚢胞癌は肺や骨を中心に血行性転移を来すことが知られているが,顎下腺腺様嚢胞癌の脈絡膜転移について本邦からの論文報告はない。今回,顎下腺腺様嚢胞癌の初回治療から約11年後に脈絡膜転移を来した症例を経験したので報告する。脈絡膜転移と同時に肺転移を認め,眼球摘出の適応はない状態であった。脈絡膜転移に対し放射線単独治療(40Gy/20回)を施行し,腫瘍縮小および視力改善の治療効果が得られた。また,治療に伴う有害事象は認めなかった。腺様嚢胞癌の脈絡膜転移に対する放射線治療は治療効果が得られる可能性が高く,生存期間が限られた患者においても低侵襲に施行可能であり,選択に値する治療であると考えられた。