2017 年 43 巻 3 号 p. 367-371
気管は生命維持に不可欠な臓器であるが,時として悪性腫瘍の浸潤,外傷,炎症などによる狭窄のため切除を余儀なくされる。切除により生じる気管欠損は整容的にも,機能的にもハンディキャップとなるが,大きな欠損の再建には難渋することも多い。われわれはin situ tissue engineeringのコンセプトに基づき,コラーゲンの足場をポリプロピレンで補強した生体内組織再生誘導型人工気管を開発した。これまでに,この人工気管を用いた非臨床試験および臨床研究を行い良好な成績が確認されている。現在われわれは,この人工気管の医療機器としての薬機承認および保険収載を目標とし,有効性,安全性を確認するための多施設共同医師主導治験を行っている。対象は既存治療で気管切開孔を閉鎖できない患者と悪性腫瘍切除に伴い気管軟骨の1/2周以上かつ3輪以上の欠損が生じることが予想される患者である。この治験を完遂し,有効性・安全性が確認されれば薬機承認申請を行う予定である。