2024 年 45 巻 1 号 p. 13-23
圧力変化によって相転移する高分子多相系はバロプラスチックと呼ばれ,米国マサチューセッツ工科大学のAnne M. Mayes 教授らによる先駆的な研究により,理論的かつ実験的に明らかにされて以来四半世紀が経過した。谷口はMayes とともに,室温よりも低いガラス転移温度(Tg)を持つポリカプロラクトン誘導体と室温よりも高いTg を有するポリ乳酸からなるブロック共重合体が,加圧下室温付近で相分離(固体)状態から相溶(流動)状態へ可逆的に相転移することを見出した。この高分子材料は,その圧力可塑性によって室温付近で加圧成形可能であるため,省エネルギー成形によるCO2 排出低減と成形時の熱分解抑制によるリサイクル性向上を同時に達成することができる。また,易分解性の環境低負荷高分子材料であり,新規高分子材料として着目されている。ここでは,分解性バロプラスチックの設計,物性,および機能について検討を行なってきた一連の研究成果について報告する。