抄録
ゲノム研究の進歩により,個々の患者におけるがん組織の遺伝子変異を解析し,最適な治療方法を分析・選択するprecision medicineが実臨床でも可能となってきた。すでに米国では手術や検査等で得られたがん組織のDNAを用いてがん関連遺伝子変異を次世代シーケンサーで網羅的に解析し,最適な薬をリストアップする体細胞ゲノム検査が日常臨床に導入され急速に普及している。当院では2015年4月より,国内では初めてとなるClinical Laboratory Improvement Amendment (CLIA) 基準を満たした網羅的がん関連遺伝子変異パネル(OncoPrime™)を自費診療として導入している。導入以後2016年2月までに141症例に対して本検査を実施し,まだ数は限られているが治療奏効例も経験している。またOncoPrime™を導入した全国6大学で本検査を受けた症例のゲノム情報と臨床情報を収集し統合するデータベース構築をAMEDの事業として進めている。今後ますますゲノム情報に基づくprecision medicineが果たす役割は大きくなるものと予想される。