抄録
頭頸部癌患者では治療開始前に低栄養に陥っている場合が多く,治療効果を高める上でも栄養管理は必須である。がん細胞は主にエネルギー産生効率の悪い嫌気性解糖により糖質代謝を行っており,それががん患者におけるエネルギー消費量増大の一因となっている。好気性解糖優位の体内環境を作るような栄養素の補給がポイントとなる。
癌治療における栄養管理も重要である。化学放射線療法で用いられる抗がん剤は,血中でアルブミンと結合して身体各部に輸送される。そのため,低アルブミン状態では抗がん剤の血中濃度が上昇して副作用が発現しやすい。また,周術期における栄養管理の重要性も近年広く認知されており,消化器外科領域では術後早期回復プロトコール「ERAS」などもすでに一般化している。しかしながら,頭頸部外科領域においては,標準的な周術期管理の方法が確立されていないのが実情である。