抄録
遠隔転移は悪性腫瘍が全身化した状態で,治療の原則は薬物療法である。しかし頭頸部癌症例の場合,遠隔転移を有していても,原発巣や頸部リンパ節転移による,窒息や出血や嚥下不能状態を回避することは,Quality of Life(QOL)維持に欠かせず,局所制御も重要な課題となる。2014年1月~2016年6月に当施設を初診した頭頸部扁平上皮癌症例で,初診時から遠隔転移を有した11例を対象として,後方視的に検討を行った。治療内容は,無治療群,薬物療法先行群,化学放射線療法先行群の3群に分類され,局所制御率・生存期間中央値はそれぞれ,無治療群0%・4ヶ月,薬物療法先行群0%・10ヶ月,化学放射線療法先行群83%・20ヶ月であった。化学放射線療法を最初に行うことは,その後長期間にわたって局所を制御する点で有用で,それはQOL維持につながると思われた。また生命予後の改善という面においても有用である可能性が示唆された。