抄録
側頭骨扁平上皮癌の発生頻度は非常に低く,質の高い治療エビデンスの構築が遅れている疾患である。今回我々は,過去20年間に九州大学病院 耳鼻咽喉・頭頸部外科を受診した側頭骨扁平上皮癌患者 103症例の検討を行った。内訳は T1が13症例,T2が19症例,T3が21症例,そしてT4が50症例であった。疾患特異的生存率(5年生存率)は,T1で92%,T2で87%,T3で87%,T4で37%であり,T4症例のみ有意に生存率の低下を認めた。手術介入症例では,断端陰性切除群が断端陽性群に比べて有意に生存率が高かった。一般的に,T3およびT4の進行側頭骨扁平上皮癌は予後不良と言われているが,断端陰性切除可能症例は予後が比較的良好であった。そのため側頭骨扁平上皮癌に対する標準治療は,進行癌であっても断端陰性による切除が有効であると考えられた。