抄録
近年,ヒト乳頭腫ウイルス (HPV)は,中咽頭癌の発癌ウイルスとして注目されている。しかし,中咽頭癌におけるHPVの発癌機構・HPVと臨床像との関連性は不明である。
同じHPV発癌である子宮頸癌では,HPVが子宮頸部上皮細胞に持続感染し,HPVがコードする2つの癌タンパク質E6/E7が,癌抑制遺伝子であるp53/Rbをそれぞれ不活化することで異常増殖細胞が生じ,HPVゲノムが宿主ゲノムに組み込まれる(インテグレーション)等の過程を通して発癌する。本来はウイルス感染に対する内因性免疫として働くAPOBEC3によってHPVゲノムや宿主細胞ゲノムに遺伝子変異が誘導され,上記過程に関わっている可能性がある。