2022 年 48 巻 4 号 p. 338-343
腸管気腫症(Pneumatosis intestinalis,以下PI)は腸管の粘膜下,漿膜下に多数の含気性小囊胞を形成する病態である。門脈ガス血症(Portal venous gas,以下PVG)を認める場合は腸管壊死などの重篤な病変の存在を疑う必要がある。PIは近年,頭頸部癌領域でも報告が散見される。今回我々は,化学放射線療法後にPIとPVGを発症し,保存的治療で軽快した下咽頭癌の2症例を経験したので報告する。症例1は50歳女性。下咽頭癌に対し化学放射線療法を施行した。放射線療法終了後13日目に発熱があり,CTでPIとPVGを認めた。症例2は73歳男性。下咽頭癌に対する経口的切除術後に後発ルビエールリンパ節転移を認め,化学放射線療法を施行した。放射線療法終了後3日目に腹部膨満感と嘔気があり,CTでPIとPVGを認めた。両症例とも腹膜刺激症状はなく,腸管壊死が伴っている可能性は低いと考えられ,保存的加療を行い軽快した。臨床経過を報告し,頭頸部癌治療と関連して発症したPIとPVGの診断と治療について考察する。