頸動脈破裂は頭頸部癌治療にて留意すべき致死的合併症である。最近4年間で2例の頸動脈破裂を救命しえたため報告する。症例1は46歳男性。下咽頭の難治性潰瘍にて紹介となる。23年前上咽頭癌に対する化学放射線療法によって,下咽頭左梨状窩粘膜の壊死,舌骨が一部消失し潰瘍形成していた。大量出血にて搬送され,左内頸動脈からの出血が疑われた。緊急血管内治療にてステントを留置し止血した。ステント内が閉塞し,脳梗塞を発症したが,その後2年生存している。症例2は71歳男性。p16陽性中咽頭癌に対してIMRTを施行した。リンパ節転移が治療中に増大し,総頸動脈から分岐部にかけ血管を取り囲んだ。同部位で腫瘍が皮膚穿破し,大量出血にて入院した。仮性動脈瘤が形成されており,血管内治療にてコイル塞栓を施行し止血した。その後免疫療法が奏効し,1年半生存している。頸動脈破裂について事前の対応などを熟知しておく必要がある。