抄録
頭頸部癌の標準的なCDDP併用化学放射線治療(CCRT)の前治療として,DTX+CDDP+5-FU(TPF)を用いた導入化学療法(ICT)の有用性が報告されているが,ICTは有害事象も多く,その効果については議論が分かれる。我々は喉頭温存希望のある進行喉頭癌,下咽頭癌30症例を対象に,ICTとそれに引き続くCCRTについて,完遂率,原発巣(T)・頸部リンパ節転移(N)別の奏功率,予後,喉頭温存について検討を行った。喉頭が9例(Stage Ⅲ:4例,Stage Ⅳ:5例),下咽頭が21例(Stage Ⅲ:3例,Stage Ⅳ:18例)。ICT(TPF2クール)の完遂率は93%,ICT+CCRTの完遂率は82%,ICTの奏功率はT100%,N80%,ICT+CCRTの奏功率はT97%,N92%,2年の全生存率は75%,2年喉頭温存生存率は67%と良好な成績であった。今回の検討から,症例を選択し,有害事象の対応を行えばTPFによるICT,CCRTでも良好な完遂,効果を得られると考える。