頭頸部癌
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49 巻, 3 号
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原著
  • 瓜生 英興, 田村 真吾, 北川 理奈, 小出 彩佳, 原 香織, 内 龍太郎, 中島 寅彦
    2023 年 49 巻 3 号 p. 249-254
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/15
    ジャーナル フリー
    頭頸部癌の標準的なCDDP併用化学放射線治療(CCRT)の前治療として,DTX+CDDP+5-FU(TPF)を用いた導入化学療法(ICT)の有用性が報告されているが,ICTは有害事象も多く,その効果については議論が分かれる。我々は喉頭温存希望のある進行喉頭癌,下咽頭癌30症例を対象に,ICTとそれに引き続くCCRTについて,完遂率,原発巣(T)・頸部リンパ節転移(N)別の奏功率,予後,喉頭温存について検討を行った。喉頭が9例(Stage Ⅲ:4例,Stage Ⅳ:5例),下咽頭が21例(Stage Ⅲ:3例,Stage Ⅳ:18例)。ICT(TPF2クール)の完遂率は93%,ICT+CCRTの完遂率は82%,ICTの奏功率はT100%,N80%,ICT+CCRTの奏功率はT97%,N92%,2年の全生存率は75%,2年喉頭温存生存率は67%と良好な成績であった。今回の検討から,症例を選択し,有害事象の対応を行えばTPFによるICT,CCRTでも良好な完遂,効果を得られると考える。
  • 松木 崇, 宮本 俊輔, 加納 孝一, 堤 翔平, 籾山 香保, 山下 拓
    2023 年 49 巻 3 号 p. 255-261
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/15
    ジャーナル フリー
    遊離組織による頭頸部再建術は,創部治癒,形態保持,機能温存において有用である。当科では遊離組織の採取と再建も頭頸部外科医が行っており,104例(106皮弁)におけるマイクロサージャリーを検討した。口腔と下咽頭の再建が多く,再建材料は前外側大腿皮弁(ALT)が約半数と最多であった。移植床の血管は上甲状腺動脈と内頸静脈が大半で選択されていた。術中の遊離組織トラブルは14例(13%)で生じ,8例が動脈吻合部血栓であった。術後の遊離組織トラブルは6例(6%)で生じ,4例(4%)で皮弁を除去していた。術後に吻合部血栓はなかったがALTの穿通枝トラブルが4例と多かった。術中トラブルは二次治療に多い傾向があり(P=0.059),術後トラブルは術後感染と関連していた(P=0.016)。過去の報告と比較しても劣らない成績であったが,特にALTの穿通枝の扱いに関して改善の余地を認めた。
  • —頭頸部外科の役割に関する考察—
    村嶋 明大, 川北 大介, 的場 拓磨, 髙野 学, 小栗 恵介, 蓑原 潔, 岩城 翔, 柘植 博之, 今泉 冴恵, 近藤 綾乃, 塚本 ...
    2023 年 49 巻 3 号 p. 262-266
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/15
    ジャーナル フリー
    頸部食道癌は全食道癌の約5%の希少疾患である。頭側への進展例では喉頭摘出が必要となり,頸部リンパ節転移例も多いことから,頭頸部外科の重要性が高い。名古屋市立大学病院では喉頭摘出・頸部郭清術を必要とする症例は頭頸部外科が頸部操作を行う。今回2017年から2022年までに,当院にて手術加療を行った頸部食道がん25例のうち,喉頭合併切除を要した15例を対象に後方視的検討を行った。年齢中央値は69歳,男性12例,女性3例であった。全症例が扁平上皮癌で,臨床病期はステージIが2例,ステージⅡが5例,ステージⅢが7例,ステージⅣaが1例であった。15例のうち7例は頸部操作のみで摘出可能であった。2年全生存率は33.3%,無病生存率は33.3%であった。術後合併症は9例で認め,気管壊死が1例に生じ処置を必要とした。頸部食道がんの治療には頭頸部外科・消化器外科の協力が重要である。
症例報告
  • 大﨑 聡太郎, 杉本 太郎, 久米 雄一郎, 上條 朋之, 近藤 律男, 谷 美有紀
    2023 年 49 巻 3 号 p. 267-272
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/15
    ジャーナル フリー
    術前内視鏡所見で悪性が疑われたが,病理検査でglycogenic acanthosisと診断された下咽頭腫瘍症例を報告する。症例は72歳男性。右声門癌の放射線治療後の経過観察中に右梨状陥凹の小病変を認めた。さらに経過観察中にその大きさと厚みの増加,表面の異常血管の明瞭化を認め,経口的切除術を施行した。術中の拡大内視鏡では病変表面にtypeB1血管様の微細異常血管を認め,早期癌と思われた。術中のルゴール染色では病変は茶褐色に濃染し,ピンクカラーサイン陰性の不染帯が隣接していた。切除標本の病理検査で病変はglycogenic acanthosis,隣接する不染帯はdysplasiaと確定診断された。下咽頭の表在性病変において,癌と区別の付きづらいglycogenic acanthosisも鑑別診断に入れ,拡大内視鏡やルゴール染色を行って総合的に評価したうえで診断と治療を行う必要がある。
  • 竹内 一隆, 望月 大極, 森田 浩太朗, 山田 智史, 今井 篤志, 瀧澤 義徳, 三澤 清
    2023 年 49 巻 3 号 p. 273-277
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/15
    ジャーナル フリー
    唾液腺原発のリンパ上皮癌は,全唾液腺癌の1%未満を占める稀な腫瘍であり,Epstein-Barr virus(EBV)の関連が示唆されている。今回われわれは,稀なEBV非関連の耳下腺リンパ上皮癌症例を経験した。症例は69歳男性,近医総合病院耳鼻咽喉科で耳下腺浅葉切除術を施行され,耳下腺リンパ上皮癌の診断となった。追加治療目的に当院へ紹介となり,術後の画像検査で頸部リンパ節転移を認めたため,左全頸部郭清術を施行した。複数の頸部リンパ節転移を認め,節外浸潤を伴っていたため,後治療として放射線治療を施行した。治療後3年経過しているが再発,転移は認めていない。リンパ上皮癌は放射線感受性が高いことが知られており,術後に放射線治療を行うことで,予後を改善する可能性がある。
  • 金田 七重, 松木 崇, 宮本 俊輔, 山下 拓
    2023 年 49 巻 3 号 p. 278-282
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/15
    ジャーナル フリー
    76歳男性。喉頭癌術後の頸部,肺転移に対してPembrolizumab単剤療法を行った。初回投与の2日後にCTCAE Grade 2の関節炎を発症した。免疫関連有害事象 (irAE) と診断し,Prednisolone 20mgから投与を開始し,速やかに症状および血液検査所見の改善を認めた。その後はPrednisoloneを漸減しながら,irAEの再燃なくPembrolizumabの投与を継続することができた。irAEとしての関節炎の報告は多くないが,Grade 2以上であると日常生活に影響を及ぼし,免疫チェックポイント阻害薬 (ICI)を中断・中止せざるを得ないこともある。しかし,irAEの発症とICIの有効性が関連するとの報告もあり,本症例でも縮小を維持している。複数の診療科と連携し,irAEを制御しながらICIを継続できることは,この症例の長期生存に寄与できると考えている。
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