1989 年 15 巻 2 号 p. 197-201
いわゆる癌年齢に達していない40歳未満の舌扁平上皮癌症例における発癌の誘因として不良歯牙の存在が臨床的見地から推測されたことから, 最近10年間の症例の再検討を行なった。その結果, 歯牙の傾斜・位置・形態の異常所見が多くの症例で確認された。このような不良歯牙が舌側縁部と異常接触していると考えられた症例が多く認められた一方で, それを自覚している症例はむしろ少ないことが明らかとなった。したがって, 口腔内診査においては舌側縁部の病変の観察のみならず, 歯牙所見を詳細に, かつ客観的にとることが重要であり, また異常所見が得られた場合には早期に処置を必要とすると考えられた。