抄録
今回われわれは, 顎下腺より発生し, 副咽頭間隙に進展した polymorphous adenocarcinoma の1症例に対し, 頸部外切開により腫瘍摘出術を施行した。術後に再発を認めたが, 放射線療法, 化学療法を併用施行することにより十分な治療効果をおさめた。本症例の臨床経過を呈示するとともに, その特異な病理組織学的所見について国内外の文献を渉猟し検討した。
Polymorphous adenocarcinoma は, 比較的新しい病型分類に属するものとされ, しかも極めて多彩な組織型を特徴としており, 大唾液腺に発生することは比較的稀とされている。また, 遠隔転移, 腫瘍死の症例の報告は少ないが, 臨床経過や治療方針からは悪性度の高い腫瘍の1つと見なして対応すべきものと思われる。