1990 年 16 巻 2 号 p. 34-39
われわれは, ヒト甲状腺腫瘍組織中に存在する Thyroglobulin (Tg) の microheterogeneity の良性および悪性腫瘍別による変化を検討することを目的とし, ヒト甲状腺腫瘍組織よりTgを精製した。その方法は, 高速液体クロマトグラフィーのシステムにより行い, 分子量66万の19STgおよび分子量33万の12Sサブユニットを簡易に分離精製した。19STgには2種類あり, 2ケの12Sサブユニットの共有結合によるものと非共有結合によるものがある。このうち, 非共有結合型19STgの12Sサブユニットへの解離には, HPLCの溶出条件としての緩衝液のpH, 分析のためのPAGEの泳動条件の関与が考えられた。しかしながら, 腫瘍組織より精製したTgの場合は, ヨウ素含量の低下にもとづく非共有結合型19STgの占める割合が高く, われわれの精製方法では19STgのみを取り出すことは難しいと考えられた。