抄録
1980年から1988年までの間に大阪大学医学部放射線科で治療された口腔底癌103例 (I期16, II期33, III期40, IV期14例) について, その治療成績と下顎保存の状態を検索した。全例の5年生存率はI期94%, II期70%, III期49%, IV期43%と殊に進行期のもので以前にくらべ著明な向上をみた。I期例中13例には198Auグレイン挿入が施行されたが, その全例に局所制御が得られ, 下顎が保存された。II期のうちでは24例に外照射30Gy/3週+BLM 90mg/3週 (まだはPEP 60mg/3週) の治療後, その反応により, そのまま経過観察. または手術, あるいは放射線治療のいずれかが行なわれた。このうちでは12例が外照射+化療後CRに達し, うち10例が2年以上に亘って局所制御され (10/12), 下顎は保存 (10/12) されている。PR以下の症例には手術または放射線治療が追加されたが, 手術の場合には局所制御が3/4に得られたものの, 下顎の保存は0/4と良好でなく, 組織内照射例の局所制御率5/8, 下顎保存率5/8に比べてQOLの面では良いとは言えない。局所制御と下顎保存を考え合わせると, I期では198Auグレインの適用が, II期では外照射30Gy/3週+BLM 90mg/3週 (またはPEP 60mg/3週) のあとの適切な治療選択が最も適切な治療手段と考えられた。重複癌発生は103例中16例 (15.5%) にみられ, 観察が延びるに従い, さらに増加が懸念された。