頭頸部腫瘍
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術前の腫瘍血管塞栓術と顕微鏡下手術が有効であった両側頸動脈小体腫瘍例
長谷川 泰久佐藤 和則松浦 秀博荒井 保明近藤 隆大口 春男村松 泰徳
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1992 年 18 巻 2 号 p. 89-93

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抄録
頸動脈小体腫瘍の手術の困難さは腫瘍がきわめて豊富な腫瘍血管を有し, 頸動脈と強く固着していることによる。術前の超選択的腫瘍血管塞栓術と顕微鏡下手術により安全に摘出し得た両側頸動脈小体腫瘍の1例を経験したので報告する。症例は39歳の男性で, 主訴は4年前からの頸部腫瘤であり, 既往歴および家族歴に特記すべき所見を認めない。DSA, CTにて両側頸動脈小体腫瘍 (右4×3cm, 左4×2cm) と診断された。手術はまず右側を, さらに1カ月後に左側腫瘍を摘出した。術前処置および手術は左右とも次のような方針で行われた。(1) 頸動脈の一時的遮断や合併切除に備えて, balloon catheter による内頸動脈血流遮断下での back pressure の測定と神経症状の有無の確認, (2) 腫瘍の縮小と術中出血量の減少を目的とした腫瘍血管塞栓術, (3) 万一に備えての血行再建の準備, (4) 脳保護のための低体温麻酔の併用, (5) 腫瘍圧迫による血管壁の脆弱性を考慮して顕微鏡下 capsular-adventitial plane での腫瘍と頸動脈の剥離。内頸動脈は両側とも保存され, 術中出血量は右550ml, 左170mlであった。術後に軽度の右舌下神経麻痺を認めたが, 他の神経障害や合併症はなく退院した。両側頸動脈小体腫瘍の手術を行う上で, 重要な点は頸動脈の保存である。術前の腫瘍血管塞栓術と顕微鏡下の capsular-adventitial plane での剥離はこの点で有用な手技であると考える。
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© 日本頭頸部癌学会
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