頭頸部腫瘍
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肩甲下動静脈系複合皮弁を用いた上顎・下顎再建
金子 剛中嶋 英雄藤野 豊美
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1994 年 20 巻 3 号 p. 446-452

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抄録

従来より頭頸部再建に多用されてきた広背筋皮弁, 肩甲皮弁等は肩甲下動脈の分枝によって栄養される皮弁であるが, 別個の皮弁と考えずに, Coleman らが提唱するように, 肩甲下動脈系皮弁と一括してとらえると, 従来の皮弁の枠組を越えて, 症例に応じて欠損及び再建目的に適した組み合わせで複合皮弁としてを挙上することが可能となる。Angular branch は前鋸筋枝または胸背動脈から直接分枝し, 肩甲骨下角部の一辺6cmほどの三角形の肩甲骨を栄養する。上顎骨, 眼窩再建に適した素材であるが, 肩甲皮弁ではなく広背筋弁と組み合わせることで, より長い血管系を確保することができ, 有用性が増大する。さらに我々の開発した肋間動脈穿通枝を血管茎とする有茎肋骨弁を広背筋皮弁に付着させることで, 複数の有茎骨弁を一挙に移行する事が可能となった。これらの肋骨弁は広背筋の筋体から完全に分離しているので, 前述の肩甲骨下角と共に三次元的に自由な位置関係を取ることが可能となり, 骨性再建の自由度を飛躍的に増大することができる。肋骨下縁の肋間動静脈は肋骨とともに皮弁に含まれるため各肋骨は自由に骨切りすることが可能で上顎下顎の微妙な弯曲に形成可能である。症例によっては, 広背筋弁を分割して用い動的再建を追加することにより, より高機能を持った皮弁を作成し好結果を得ている。本皮弁は, 解剖の変異も少なく挙上が容易であり, 皮弁のドナーの犠牲が少ない, 血管吻合が容易なことなどの利点も合わせ持っている。現在までに, 上顎再建13例, 下顎再建9例に本皮弁を適用してきた。合併症としては, 皮弁の部分壊死が上顎で1例, 局所感染または瘻孔形成が上下顎1例ずつ認められた再手術を要した。開胸が肋骨弁症例13例中3例 (23%) に認められた。皮弁の全壊死は認めなかった。以上から頭頚部再建に極めて有用で安全な皮弁と考えられる。

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© 日本頭頸部癌学会
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