抄録
1989年より1993年までに, 北海道大学形成外科, 耳鼻咽喉科, 脳神経外科および関連病院にて頭頸部腫瘍切除後頭蓋底即時再建14例を共同して行なった。脳脊髄液漏, 髄膜炎, 脳ヘルニアなどの術後合併症は, 全例において生じなかったが, 2例において硬膜外膿瘍が生じた。この14症例において, 術後硬膜外膿瘍の発生と術前放射線治療の有無, 頭蓋底骨欠損部の大きさ, 再建に用いた皮弁, 硬膜の修復に用いた材料, そして頭蓋底部への骨移植の有無との関係について, 統計学的に分析し, 検討を加えた。硬膜外膿瘍が発生した2例はいずれも, 術前に放射線治療を行なわれており, 放射線による創傷治癒の遅延を示唆した。硬膜再建に人凍結乾燥硬膜を用いた症例では, 全例感染などの合併症はみられず, 硬膜の修復に適した材料であると考えられた。頭蓋底部へ骨移植を行った症例において, 術後硬膜外膿瘍の発生が統計学上有意に多く見られた(p<0.05)。硬膜外膿瘍を生じた2例は, 移植骨を摘出しており, 現在, 平均術後観察期間1年8か月において, 14例中13例 (93%) が頭蓋底の硬性再建を行なわない状態で良好な経過をたどっている。これまでの経験より, 骨欠損部の大きさが最大6×5cm以下の症例では, 頭蓋底再建に骨移植は必要ないと考える。