私たちは, 34症例の口腔原発扁平上皮癌を対象にE型カドヘリンとその機能発現を制御しているα-カテニンの発現性を免疫組織化学的に調査し, 患者の予後との関連について検討した。
E型カドヘリンおよびα-カテニンの発現が減弱 (あるいは欠失) を示す症例は臨床的にはリンパ節転移例に比較的多くみられ, 癌細胞接着能の低下はリンパ節転移の有無を反映することが示唆された。また, 病理組織学的にはE型カドヘリンおよびα-カテニンの発現の程度は, 癌の分化度と浸潤様式に逆相関した。これらのことからカドヘリン-カテニン複合体としての接着分子の検討は, 口腔癌患者の予後判定の一助になると考えられる。