日本臨床外科学会雑誌
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症例
特発性大網血腫の1例
大橋 浩一郎山崎 元張 宇浩笹岡 英明西野 雅行
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キーワード: 大網血腫, 大網出血, 特発性
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2007 年 68 巻 3 号 p. 710-714

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抄録

症例は44歳, 女性. 右側腹部痛と発熱を主訴に当院受診となった. 右側腹部に圧痛および筋性防御を認め, 腹部CTで胆嚢と横行結腸の間に約6cm大の腫瘤像と少量の腹水を認め血腫が疑われた. 原因が不明であったが症状および貧血も軽度であったため絶食および点滴治療を10日間行い症状は改善傾向を示し一旦退院とした. 1カ月後のCTで腫瘤は約2cm大に縮小していたが, 本人の承諾を得た上で診断および治療目的で腹腔鏡にて手術施行となった. 右側の大網に約2cm大の暗赤色調の表面平滑な血腫を認め周囲の大網とともに血腫摘出術を行った. 摘出標本は器質化した血腫であり, 明らかな腫瘍性病変, 異所性子宮内膜症, 動脈瘤などの所見は認めず, 外傷の既往もないため特発性大網血腫と診断した.
特発性大網血腫の本邦報告例は自験例を含め12例と稀であるが, 原因不明の腹腔内血腫を診断する際は本疾患も念頭に置くべきと考える.

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© 2007 日本臨床外科学会
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