頭頸部腫瘍
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腺様嚢胞癌の細胞特性
特に浸潤機構
白砂 兼光阪井 丘芳杉浦 剛松矢 篤三
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1996 年 22 巻 1 号 p. 7-12

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抄録

腺様嚢胞癌細胞ACCSは基底膜物質を含む多量の細胞外基質 (ECM) 産生能をもつ。ペトリ皿上にACCS-ECM, フィブロネクチン (FN), ラミニン (LAM), IV型コラーゲン (COLL IV) を作製し基質上でACCS細胞を培養すると, 細胞遊走は著しく充進された。次に, boyden chamber を用いて細胞遊走に対する各種ECMの効果を検討するとFN, LAM, Coll IVはいずれもACCS細胞に対して強いケモタキシスやハプトタキシス活性を示し, その促進効果は他の口腔癌細胞に比較して極めて強いものであった。即ち, 腺様嚢胞癌細胞は多量のECMを産生し, そのECMは細胞増殖の足場となり遊走 (ハプトタキシス) を助け, また神経や血管を被覆するLAMやCOLL IVなどの基底膜分子のケモタキシス活性によって腺様嚢胞癌細胞はそれらに特異的に浸潤することが示唆された。さらに本研究はこれらECMによる細胞遊走にインテグリンなどの細胞接着因子がその調節機構に強く関与することも示唆した。

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© 日本頭頸部癌学会
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