頭頸部腫瘍
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舌癌切除後のリンパ節転移の予知因子について
舌部分切除単独治療症例を用いての検討
木村 幸紀柳澤 昭夫鎌田 信悦岡野 友宏
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1996 年 22 巻 1 号 p. 78-82

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抄録

本研究では, 頸部リンパ節転移の予知因子を決定することを目的に, stage I・IIの舌扁平上皮癌症例の臨床病理学的検討を行った。対象は, 1976年から1994年までの間に, 癌研頭頸科にて舌部分切除術単独で治療した60例とした。検討項目は, 年齢, 性別, 癌の最大径, 深達度, 筋層浸潤部の大きさと深さ, 脈管侵襲および傍神経浸潤とした。後発転移は, pT1の23% (43例中10例), pT2の59% (17例中10例) に生じ, 術後3年以内にみられた。上皮内癌 (5例) と粘膜下層内癌 (22例) では癌が大きくても転移がみられなかった。一方, 筋層浸潤を生じた癌では61% (20/33) に転移がみられた。また, 筋層内の癌の大きさが5mm以内でも40%, 深さが僅か1mmでも33%に転移がみられ, 高い転移率を示した。他の因子の関連性は少なかった。従って, 舌癌におけるリンパ節転移に関して最も信頼性の高い予知因子は筋層浸潤であると考えられた。

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© 日本頭頸部癌学会
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