日本頭痛学会誌
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Print ISSN : 1345-6547
東洋医学シンポジウム
婦人科疾患に関連する頭痛の漢方治療
牧田 和也
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キーワード: 漢方治療, 頭痛, 婦人科疾患
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2025 年 52 巻 1 号 p. 86-90

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抄録

 頭痛診療における漢方治療の位置づけについては,「頭痛の診療ガイドライン2021」によれば,「頭痛診療において漢方薬は有効か」というClinical Questionに対して,「漢方薬は伝統医学をもとに,経験的に使用されてきた治療薬である.頭痛に対しても各種の漢方薬が経験的に使用され,効果を示している.近年では徐々に科学的エビデンスも集積されつつあり,頭痛治療に対する有効性を裏づけている.」というAnswerで,「弱い推奨/エビデンスの確実性B」という評価がなされている.そのうえで,その解説・エビデンスとして,呉茱萸湯,桂枝人参湯,釣藤散,葛根湯,五苓散の5種類が紹介されている.この5種類のなかでは,呉茱萸湯の片頭痛への適応,釣藤散の緊張型頭痛への適応は,比較的よく知られているが,保険の薬価収載がなされている漢方製剤のなかで,「頭痛」への効能が記載されているものは計15種類ある.筆者は,漢方専門医を標榜してはいないが,産婦人科自体が女性の各世代のさまざまな不定症状を診る機会が多いため,筆者が医師になった1980年代でも漢方製剤を使用する機会は少なからずあった.その後,更年期医療を専門とするようになり,おもに大学病院の更年期専門外来のなかで漢方製剤の使用範囲を広げてきた.特に片頭痛は,月経周期・妊娠・分娩・更年期における女性ホルモンの変動との関連が深く,また緊張型頭痛は更年期世代での発症頻度が高いことが知られており,私自身は頭痛だけでなく婦人科疾患との関連でその治療を考える機会も多い.今回,産婦人科の頭痛専門医の立場から,頭痛における漢方治療について婦人科疾患との関連を含めた視点で解説した.

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