日本頭痛学会誌
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教育セミナー
「薬剤の使用過多による頭痛」の基本的事項
秋山 久尚
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2025 年 52 巻 1 号 p. 91-96

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抄録

 「薬剤の使用過多による頭痛」 (medication-overuse headache : MOH) は,以前からの片頭痛または緊張型頭痛などの一次性頭痛をもつ患者で薬剤の使用過多に関連し新しいタイプの頭痛が発現した状態,または以前から存在する一次性頭痛が著明に悪化した状態で,以前のICHD-2日本語版では「薬物乱用頭痛」と和訳されていた.以前は乱用薬剤の使用中止後2ヵ月以内に頭痛が消失または以前のパターンに戻ることが必須であったが,現在では薬剤の使用中止による改善を要件としていない.このためICHD-3診断基準では,「以前から頭痛疾患をもつ患者において,頭痛は1ヵ月に15日以上存在する,1種類以上の急性期または対症的頭痛治療薬を3ヵ月を超えて定期的に乱用している,ほかに最適なICHD-3の診断がない」としている.一般集団におけるMOHの1年間の有病率は1~2%とされ,女性に多く,平均年齢は40~50歳台とされる.治療は原因薬剤の中止,薬剤中止後に起こる頭痛への対処,予防薬の投与であり,原因薬剤の中止については即時中止,漸減中止のどちらがよいかの結論は出ていない.トリプタン,エルゴタミン,非ステロイド性抗炎症薬,複合鎮痛薬,単純鎮痛薬では重度の離脱症状を引き起こさないため即時中止が,バルビツール,ベンゾジアゼピン,オピオイドでは漸減中止が勧められている.近年では予防療法である抗CGRP関連抗体薬の有効性が報告されている.薬剤の使用過多による頭痛は離脱後1年以内に約3割が再発するとされ,離脱後の助言が大切である.

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